広島大学工学部第三類/大学院統合生命科学研究科 生物工学プログラム
海洋生物工学研究室

Research

海洋遺伝子資源の活用

微生物の99%以上は未培養、培養困難種と言われています。
海洋微生物の場合、99.9%以上が未知・未培養なのです。
しかし、たった0.1%の培養確立株から数多くの有用物質・有用遺伝子が発見されていることから、
99.9%に含まれる微生物からはどんな有用マテリアルが取得できるか興味が持たれます。

未知遺伝子取得に向け、メタゲノムアプローチによって、これまでに新規でユニークな性質を持つ遺伝子・たんぱく質を報告しています。
・産業有用酵素
・重金属濃縮たんぱく質・重金属耐性付与遺伝子

次世代シ-クエンサーによるメタ解析で、微生物の名前や機能を知ることが可能になりました。
しかし、これらの情報は独立していて、「誰が」「何を」やっているかは不明です。そこで私たちは個々の微生物と機能を結びつける新技術を開発しています。


海洋溶存金属の回収

海洋には、レアメタル・レアアースに分類される金属全種を含む80種類以上の元素が溶存しています。世界第6位の排他的経済水域を持つ我が国は、これらの利用ができれば資源大国です。
しかし、その溶存濃度は非常に希薄で、物理・化学的濃縮は困難です。
ならば、生物の物質認識能力を利用してはどうでしょうか。
例えば、マンガンの海洋溶存濃度は0.02 ppb。海洋性Bacillus sp.は、胞子形成の際、この希薄なマンガンイオンを取り込み、二酸化マンガンの黒い層を含む胞子を形成することが知られています。また海底のマンガンノジュール(団塊)は、これらのマンガン酸化菌によって形成されたと考えられています。
微生物の中には、好んで金属を濃縮するものがいます。
メタゲノム探索では、すでにレアメタル回収遺伝子、重金属耐性遺伝子を取得しています。
これらの微生物の金属凝縮能を、海洋の溶存金属回収に利用します。


新たな海洋微生物の探索

毎年、研究室全員で海にサンプリングに行きます。
サンプルは研究室でしばらく集積培養します。
その後ニーズに合わせてスクリーニングしていきます。

Nitratireductor sp. OM-1株
「廃液中のプロピオン酸を消費して油に変換する細菌を捕まえて」
という依頼が始まりでした。
この要望に応えて、Nitratireductor sp. OM-1株を分離しました。